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劇場版『ぼっち・ざ・ろっく!』前編後編
2022年に放送されたTVアニメを再編集した劇場総集編。前編『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:』(2024年6月公開)、後編『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:Re:』(2024年8月公開)と前後編に分けて製作されました。2024年8月27日時点で、前編の観客動員数は42万人、興行収入は6億4000万円を記録し、後編の観客動員数は30万人、興行収入は4億6000万円を突破。TVアニメの総集編と言えど新鮮味があり、劇場ならではの大迫力の音響で鑑賞者を楽しませています。
TVアニメのシリーズ構成・脚本を務めた吉田恵里香は、2024年4月から放送を開始した2024年度前期NHK連続テレビ小説『虎に翼』の脚本も担当しています。不思議な縁で、『ぼっち・ざ・ろっく!』の劇場版の公開と朝ドラの放送が同時期に重なり、この情報は双方のファンを驚かせました。
劇場版『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:』前編OP・ED
OP・「月並みに輝け」結束バンド
劇場総集編・前編のOPテーマは、TVアニメの第1話から第11話まで使用されたOPテーマ「青春コンプレックス」と同じく、樋口愛が作詞、音羽-otoha-が作曲、三井律郎が編曲を務め、結束バンドの喜多郁代(長谷川育美)が歌っています。
〈天才だって信じてた〉と根拠のない自信に満ちたフレーズから始まる疾走感のあるキャッチーな楽曲。間奏の静けさを打ち破るように終盤にかけて音は厚みを増して、ガールズバンドとは思えない勇ましい雰囲気をまとってきます。
小さな子どものような〈無知で無敵だったヒーロー〉という歌詞も印象的。周りを知り挫折しても、“無知な自分”を受け入れて、〈秒速340mを超えていけ〉と自分を信じて突き進む情熱にあふれています。後藤ひとりのキャラクターをイメージさせながらも、聴き手にも過去の自分とリンクさせ共感を生んでいる1曲です。
ついボーカルに耳を奪われますが、楽器隊の細かなテクニックも注目ポイント。
作曲を担当した音羽-otoha-と、編曲を担当した三井律郎はYouTubeで本曲を演奏している動画を公開しており、指の動きも雰囲気もカッコいいと絶賛されています。
ED・「今、僕、アンダーグラウンドから」結束バンド
劇場版前編のEDテーマは、TVアニメの第8話から第11話まで使用されたEDテーマ「なにが悪い」と同様に、北澤ゆうほが作詞作曲、三井律郎が編曲を担当し、こちらも結束バンドの喜多郁代(長谷川育美)が歌っています。
ギターをかき鳴らすバンドサウンドに、“心の叫び”を表現した長谷川の歌声が響くキュートなポップソング。歌詞では、出口のない現実を彷徨う不安感、自分を見てほしい、人と繋がっていたいという欲求を綴っています。
〈痛いほどハウリングする音〉という自我の叫びと〈ひとつひとつ光る星を結ぶように/奏でられたらいいな、〉という憧れの気持ちを対比したり、〈逃げたい〉〈だけど〉など同じ単語を繰り返すことで、もどかしい感情がリアルに伝わってきます。手拍子が一体感を生み、〈アンダーグラウンド〉に居る孤独を包み込んでいるようです。
劇場版『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:Re:』後編OP・ED
後編『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく! Re:Re:』は2024年8月9日に公開されました。後編の公開を祝い、本作品のファンである歌手のAdoが「中学生の自分が見たら自分は歌い手と一緒にギターヒーローを目指していたかもしれない」とコメントを寄せています。
OP:「ドッペルゲンガー」結束バンド
劇場総集編・後編のOPテーマには、結束バンドが文化祭前の初ライブで演奏したとされる“幻の3曲目”が使用されました。TVアニメでは放送されなかった曲なのでファンを歓喜させました。
劇場総集編・前編のOPテーマ「月並みに輝け」など、本作品で多数の曲に携わってきた樋口愛が作詞し、三井律郎が編曲を務め、結束バンドの喜多郁代(長谷川育美)が歌っています。YUKIやAimerらアーティストに楽曲提供をしている飛内将大が初めて作曲を担当しました。
過去には、飛内が編曲した曲を三井がギターで弾いたこともあり、今回は、飛内が作曲した曲を三井が編曲しています。結束バンドを介し、2人の音楽の絆が一層深まった1曲となりました。
テンポよくベースが響く爽やかなガールズロックで、最初から最後までギターをかき鳴らす結束バンドらしい胸熱な楽曲です。ドッペルゲンガーを登場させて、最強の自分も最弱の自分も、本心も偽りもひっくるめてすべてが自分であるという心の叫びを綴っています。
TVアニメ放送時より現在の方が自身の歌がうまくなっていることを実感している長谷川は、初ライブ当初の時系列と喜多郁代の歌唱力に苦労したと語っています。発声やブレスで繊細に歌いこなしてライブの緊張感や初々しさを表現しています。〈その涙を隠さないで〉というフレーズには喜多ちゃんの優しい人柄も伝わってきます。
ED:「Re:Re:」結束バンド
劇場総集編・後編のEDテーマは、TVアニメ最終話EDテーマ「転がる岩、君に朝が降る」に次ぎ、ASIAN KUNG-FU GENERATION(アジカン)の原曲をカバーし、後藤ひとり(青山吉能)が歌っています。
原曲は2004年に発売されたアルバム『ソルファ』に収録されています。2016年に再レコーディングされ、同年放送のTVアニメ『僕だけがいない街』のOPテーマとして話題になりました。2024年8月に横浜BUNTAIで2日間開催された「ファン感謝祭2024」でも披露された今も色褪せない名曲です。
長いイントロが特徴の再レコーディング曲を、結束バンドの山田リョウならこう編曲するのではないかと想像し三井律郎が編曲しています。アジカンへ最大の愛とリスペクトが込められた気合のカバー曲です。
アジカンの後藤正文は「前進しているのか後退しているのかも分からず、楽器とロックバンドだけが救いだった。彼女たちも当時の僕たちと似たような想いを抱えているのかもしれないと思って聞くと、当時の切羽詰まったような日々も無駄じゃなかったと感じて救われる」と想いを語っています。
タイトルの「Re:Re:」は「返信の返信」を意味し、過去・現在・未来の自分が時空を越えて繋がって、自分と対話をしているような歌詞になっています。悩める感情を等身大に歌い、爽快な音楽が無限の可能性がある未来へ導くように曲全体を包み込んでいます。アジカンの無骨で味のある雰囲気とはまた違い、後藤ひとりの少し控えめな歌声が心地よいレトロポップな楽曲へと変化しました。
物語の中で、主人公の後藤ひとりは作詞や人と関わることに挑戦し、一方現実では声優陣が結束バンドとして音楽フェスなどにも出演してきました。後藤役の青山は「漫画・アニメ・現実の世界で色々な経験を積んだ。初カバーした「転がる岩、君に朝が降る」の時よりも自信を持った後藤ひとりに聞こえていたら嬉しい」とコメントしています。
最後に
2022年12月に発売した、結束バンドの初アルバム『結束バンド』は、「オリコン上半期ランキング2023」で「女性グループ史上初のデジタルアルバムランキング1位」を獲得、Spotify「Global Top Debut Album」で邦楽として唯一ランクイン、海外メディア「Anime Trending」主催「第9回アニメトレンドアワー」では、年間最優秀賞のアニメオブザイヤーなど8冠を達成。
Billboard JAPAN「年間ダウンロードアルバムチャート」で1位、オリコン「作品別売上数部門 デジタルアルバムランキング」で年間1位を獲得。
2022年のCD発売1か月が経っても特設コーナーが設置され、ニュースとして取り上げられるほど反響があり、2023年12月27日には発売1周年記念として「結束バンド」アナログレコード(LP盤)も発売しました。
2024年8月14日には結束バンドのミニアルバム「Re:結束バンド」を発売。『劇場総集編ぼっち・ざ・ろっく!Re:/Re:Re:』のOPテーマEDテーマ、 日本コカ・コーラの天然水「い・ろ・は・す」をイメージした初タイアップ楽曲 「僕と三原色」、音羽-otoha-が作詞作曲を担当した挿入歌「秒針少女」の全6曲を収録しています。
「Billboard JAPANダウンロード・アルバム集計速報」(2024年8月21日公開、2024年8月12日〜8月18日集計)では2位に大差をつけ首位を獲得し、「オリコン週間デジタルアルバムランキング」(8月21日発表)でも初登場1位に輝きました。
結束バンドは、2023年5月にZepp Hanedaでワンマンライブを開催し、2024年5月には「JAPAN JAM 2024」に出演。その勢いは止まることなく、2024年9月から12月にかけて全国5都市を巡るZeppツアー「We will」も予定しています。
過去のアニメ『けいおん!』や『響け!ユーフォニアム』のように、本作をきっかけに新たにギターを始めるライト層への販売も増えて楽器市場を支えました。実際に楽器に触れ音を楽しむ人たちの間口を広げ、アナログが紡ぐ生音とバンドの魅力を伝えています。
作品の主な舞台が下北沢であることから、ライブハウスや公園など街全体が聖地巡礼スポットになり、2023年9月には、結束バンドが下北沢の公認アンバサダーに就任したりと、ぼざろ熱はまだまだ盛り上がりをみせています。新しいギターを相棒にしたひとりと結束バンドの活躍をTVアニメ第2期で見られることにも期待したいですね。
Snow Manの佐久間大介、キタニタツヤ、Aimerなど、アーティストのファンも多く、2024年以降も音楽界で大旋風を巻き起こす予感がします。