2020年10月からTVアニメが放送され、ダークな世界観が話題を集めた「呪術廻戦」。
2021年12月には映画も公開され、2023年7月から12月まではTVアニメ第2期が放送され、その人気は増すばかりです。
週刊少年ジャンプにて好評連載中の本作は、人間の負の感情から生まれる「呪い」と、それを祓う呪術師の物語。
自らの命を危険にさらしつつも、市民の平和を守るため、そして自らの生きる意味を見出すために戦い続ける呪術師の姿は、見る人の胸を熱くします。
そして、物語の魅力をさらに深めてくれているのが、オープニングテーマとエンディングテーマ。
この記事では、アニメ「呪術廻戦」のOP・EDの魅力を解説します。
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目次
オープニングテーマ
第1期第1クールオープニングテーマ:Eve「廻廻奇譚」
「呪術廻戦」第1クールのオープニングテーマはEveの「廻廻奇譚(かいかいきたん)」。インターネットを中心に活動する彼の最大のヒット曲となりました。
元々、原作ファンだったというEve。曲を制作するにあたり、漫画を1巻から最新話まで読み返したそう。「廻廻」は、「まわる」「めぐる」という意味を持ち、「奇譚」は「めずらしい話」「不思議な物語」という意味です。ダークファンタジー作品であり、呪霊との戦いを繰り返す本アニメを表したタイトルだと捉えることができます。
呪霊とは、作品内に登場する敵のこと。人間の負の感情から生まれ、一般市民には目に見えません。病院や学校など、多くの人の思い出として記憶される場所は負の感情の受け皿となり、呪霊が発生しやすいと言われています。
バンドサウンドが響くイントロから急降下し、まるでブツブツと念仏を唱えているようなAメロ、曲調が変わりハイトーンボイスが現れるBメロ、一気に加速し戦いのシーンを色濃く描くサビという構成。
Eve自身、「どうすればダークで疾走感のあるドシッと重い歌を歌えるかをものすごく考えさせられた」と発言しており、曲を通して混沌とした雰囲気と気持ちの良い疾走感に満ちた曲となっています。
サビでは
闇を祓って 闇を祓って 夜の帳が下りたら合図だ
とEveの原作愛が伺える歌詞も。
呪術師は戦いの際、呪霊を炙り出す目的で帳を下ろします。帳の内側はまるで夜のように暗くなり、帳の外からは中の様子が見えなくなります。この歌詞は、「呪術廻戦」のためだけに書かれた歌詞と言えるのではないでしょうか。
アニメのオープニングでは1番しか流れませんが、注目してほしいのが2番のサビ冒頭の歌詞。
五常を解いて 五常を解いて
という言葉が聞こえます。
五常とは、人として踏み行うべき基本の道「仁、義、礼、智、信」を指しますが、「呪術廻戦」の「ごじょう」といえば、最強呪術師の五条悟。同音異義語として言葉遊び的に組み込まれていると捉えることもできますが、アニメ後の展開で五条悟は戦いの末、獄門疆という特級呪物に封印されてしまいます。
アニメ放送開始時には、漫画ですでにこの先の展開も描かれていたため、原作を読んだEveが「五条悟の封印を解いて」という意味を込めた可能性もゼロではないでしょう。小さな仕掛けがたくさん隠されたおもちゃ箱のような一曲です。
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第1期第2クールオープニングテーマ:Who-ya Extended「VIVID VICE」
「呪術廻戦」第2クールのオープニングテーマはWho-ya Extended(フーヤエクステンデッド)の「VIVID VICE(ヴィヴィッド ヴァイス)」。
Who-ya ExtendedはボーカルのWho-ya以外はメンバーを固定しておらず、曲に応じてメンバーを組み替えるクリエイターズユニットです。そのため、曲によっての色が全く異なり、様々な顔を楽しめるため、コアなファンに人気を誇っています。
ドラムの音が強く響き、緊迫した雰囲気が漂う本楽曲。「vivid」は、「鮮明な」「強烈な」、「vice」は「悪行」「犯罪」の意味を持ちます。直訳すると「強烈な悪」の意味を持ち、人々の生活を脅かす呪霊を表す言葉と捉えることができます。
オープニングの映像では、黒い傘をさして歩く登場人物の姿があります。まるで誰かのお葬式に参列しているような雰囲気です。暗い部屋で下を向く姿、イチョウが舞う中、アスファルトに落ちる涙らしきものなど、曲を通して漂う不穏な空気が第2クールを迎えたアニメの戦いの厳しさを物語ります。
主人公である虎杖悠仁は、運動能力が桁外れということ以外は普通の高校生として過ごしていましたが、呪いの王である両面宿儺の指を食べたことにより生活が激変。人間にとっては両面宿儺の指は猛毒であり、即死するはずでしたが、虎杖悠仁の特異体質により受肉してしまいます。両面宿儺の指は20本あり、どんな呪術師でもその指を消し去ることができませんでした。
そんな中現れた、両面宿儺の指に対応する器を持った虎杖悠仁。指を1本食べた時点で秘匿死刑が決定していましたが、最強の呪術師・五条悟の提案により、20本の指全てを取り込ませてから死刑と、無期限の執行猶予が与えられます。
ここで注目したいのが
千切れそうな綱の上 ただ揺らさぬように潜めるか
一か八か 駆け抜けるか 選択肢なんて 罠に見える
踏み出せ その歩を
という歌詞。
虎杖悠仁は死刑執行が決まっている身。両面宿儺の指を取り込むということしか指示されていませんが、彼は積極的に戦いの場へと赴きます。
それは、亡くなったおじいちゃんの「オマエは強いから人を助けろ」という遺言があるから。どうせ死ぬのなら、誰かが指を持ってくるのを待つだけではなく、一人でも多くの人を助けたいと歩きだす虎杖悠仁の心の強さを感じることができます。
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第2期第1クールオープ二ングテーマ:キタニタツヤ「青のすみか」
最強の呪術師と最悪の呪詛師と呼ばれる五条悟と夏油傑。TVアニメ第2期は、時は遡り2006年へ。2人が呪術師として向かうところ敵なしだった、東京都立呪術高等専門学校の時代を中心とした物語です。2023年7月6日から2023年8月3日までは「懐玉・玉折」を放送し、8月10日「閑話前編」、8月17日「閑話後編」、8月31日からは「渋谷事変」の放送を予定しています。
2023年7月6日から2023年8月3日まで放送の第2期「懐玉・玉折」のOPテーマ曲。シンガーソングライターから楽曲提供までジャンルを越えて活動するキタニタツヤが担当しました。青春時代をテーマに、爽やかという言葉がふさわしいギターロックの楽曲。背景には、シンセサイザー、手拍子や指を鳴らす音など、色々な音を散りばめた巧みなサウンドが耳に残ります。特に、「ウェストミンスターの鐘」のチャイムのフレーズに合わせたコーラスが流れると、聴き手は一瞬にして学生時代にタイムスリップしているかのような感覚に。
歌詞は、誰にでも1度は経験があるであろう、若き日の喪失や後悔の思いを情緒豊かに制作されています。恐れを知らない青春時代の思い出も、物や香りから思い出す懐かしさも、すべてを“青”と表現。「すむ」に「棲む・澄む」の2つの意味を込めて、その“青”が大人になっても心を支えてくれるはずさ、という思いを込めています。
OP映像は、青空、空を反射するビル、水族館と、画面いっぱいに青が広がり、極めつけに、呪術の流れを視覚情報として認識する“五条の六眼の青”が惹きつける映像に。歌詞の〈四つ並ぶ眼〉という言葉が五条悟と夏油傑の最強の日々とリンクし、劇場版を公開した後なので、仲間たちと過ごした日常の風景が愛おしく思える眩しい仕上がりです。
MV映像は一変し、砂漠に座り込む真っ赤に染まったキタニに驚かされます。呪術的に赤に縛られる自身、傍らには青に染まったもう一人。少しくすんだ映像の青色が、単純に「青は爽やかな色」と断言せず、歌詞の〈声にならない声/笑顔の奥の憂い〉といった、表にはでない影のある裏面を思わせます。ド直球ではなく、いい意味で期待を裏切ってくれたキタニの描く青春ソング。
好きな言葉や雰囲気の質感が似てると自身も原作のファンであり、「懐玉・玉折」は1番好きな物語と言う。2022年10月から放送中のTVアニメ『BLEACH 千年血戦篇』第1・第2クールのOPテーマ曲も務めた話題のキタニタツヤ。第2期の放送前から注目を浴びていました。
第2期第2クールオープ二ングテーマ:King Gnu「SPECIALZ」
第2期第2クール『渋谷事変』のOPテーマは、2021年公開の『劇場版 呪術廻戦 0』主題歌「一途」・EDテーマ「逆夢」と同じく、King Gnuが担当しました。今回は、「一途」の疾走感と打って変わって、重低音が響く静かでダークな楽曲に。しかしそこには、落ち着いた雰囲気は微塵もなく、呪霊たちが蠢く魑魅魍魎とした世界観を構築しています。時折、低級霊がモヨモヨと鳴くような声も響き、おどろおどろしさが躍動しています。
作詞・作曲を手がけた常田大希(Vo・G)も「呪い達の大暴れに相応しい楽曲を作り上げた。爆音で聴いてトんでくれ」とコメントしています。
TBS系「日曜日の初耳学」(2023年11月26日放送)の、現代文講師の林修がMCを務め、King Gnuの楽曲「飛行艇」をテーマ曲にしたコーナー「インタビュアー林修」にメンバー全員で初めて出演し、楽曲制作について語りました。
136個もの音から作られている「SPECIALZ」。作曲した常田は勿論全ての音を聞き分けていると答えています。一方、他のメンバーは、あまりわかっていない…と笑いを誘うも、常田のずば抜けた音の追求や熱量に鳥肌が立った制作裏話となりました。
さらに、漢字・英語・数字を用いた言葉遊びが巧みな歌詞も特徴。中でも〈"get 1◯st iπ 31"〉は、「1◯ 31」は「渋谷事変の発生日(10月31日ハロウィン)」を意味し、加えて「get 1◯=夏油(げとう)」「st=五条悟(satoru)」と登場人物の名前もかけています。この謎解きのような仕掛けにも原作への愛情を感じます。
MV映像は、彼らの楽曲「白日」のMVを手がけた映像作家のOSRINが監督を務めました。『呪術廻戦』ファンでもあるOSRINと制作陣が、原作の混沌とした世界観をKing Gnuらしく表現。実写とCGを組み合わせ、原作のシーンを思わせるカット、五寸釘と金槌で呪力を発動する釘崎野薔薇や丑の刻参りを思わせる典型的な呪法も折り込んで、画面が切り替わる度に強烈な印象を残しています。
スーパーマンや力士、学級集団の中の異質な存在など、“他と違うものたちばかり”が現れて、呪文のように繰り返す〈"U R MY SPECIAL"/"WE R SPECIAL"〉のフレーズ。OSRIN監督が「最強の自己暗示に仕上がってるはず」と語る通り、カオスな楽曲と映像が「自分は特別だと信じろ」と言わんばかりに脳内をループします。
2023年12月13日公開(集計期間:2023年12月4日~12月10日)Billboard JAPANアニメチャート“JAPAN Hot Animation”では、1位「SPECIALZ」King Gnu、2位「青のすみか」キタニタツヤ、8位「一途」King Gnu、9位「逆夢」King Gnu、10位「more than words」羊文学と、『呪術廻戦』の楽曲がランキングを席巻しました。
エンディングテーマ
第1期第1クールエンディングテーマ:ALI「LOST IN PARADISE feat. AKLO」
「呪術廻戦」第1クールのエンディングテーマはALIの「LOST IN PARADISE feat. AKLO」。
ALIはメンバー全員が日本以外の国にルーツを持っている他国的音楽集団です。歌詞の中には英語も多く、海外のファンからも人気を博しています。
明るくポップな曲調の中、アニメーションで描かれているのは呪術師たちの休日の様子。そこには、明るい表情でヘアセットをし、ドアを開けてダンスを踊る虎杖悠仁の姿があります。ラーメンを食べ、釣りをして、と普通の男子高校生らしい日常が垣間見えます。主人公・虎杖悠仁の同級生である伏黒恵と釘崎野薔薇、最強呪術師の五条悟など、それぞれが満喫する休日は戦いの合間の平穏を感じさせます。
良い意味で日本のアニソンらしさがない本楽曲は、主にアメリカで普及している日本のアニメ配信サービス「クランチロール」アニメアワード2021で「最優秀エンディング賞」を受賞。都会的で洗礼された印象を受け、思わずステップを踏みたくなるような一曲です。
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第1期第2クールエンディングテーマ:Cö shu Nie「give it back」
「呪術廻戦」第2クールのエンディングテーマはCö shu Nie(コシュニエ)の「give it back」。
バンド名のCö shu Nieは造語で特に意味はなく、「自分たちがその言葉の意味になる」という思いが込められています。
本楽曲でテーマとなっているのは「戻りたい場所」。
暖かい 涙で ふいに目覚めた
焦がれた 夢の続きは 何処にあるの
寂しいよ
という言葉から曲は始まります。
理想的で幸せな夢を見ていたけれど、ふと目が覚めて突き付けられる現実に寂しさを感じていると捉えることができるこの歌詞。「呪術廻戦」は、呪霊と戦っていく中で、大切な仲間の死が描かれる場面もあります。この曲の主人公を、アニメの主人公・虎杖悠仁だとすると、きっと夢の中でもう会えない仲間と楽しい時間を過ごしていたのでしょう。
タイトルである「give it back」は和訳すると「返してほしい」という意味になります。さらに曲中では「give it back」の前に「Pleace」がついているため、お願いよりも強い懇願の意味になるところも注目すべきポイント。ボーカル・中村未来の叫び声のような声も特徴的で、「お願いだから、お願いだから返してください」という思いが込められている楽曲です。
アニメのエンディング映像は主人公・虎杖悠仁や、同級生の伏黒恵、釘崎野薔薇などをスマートフォンの動画撮影機能で撮影したような雰囲気です。ここで注目すべきなのは、コートを着ていたり、吐く息が白かったりと、季節が冬であるということ。
しかし、作品の中では、ハロウィンである10月31日に「渋谷事変」という大きな戦いがあり、多くの犠牲を払いました。虎杖悠仁が仲間と出会った春、大きな戦いがあった秋、そしてみんなで楽しそうに笑いあう冬。この冬の風景が現実になることはもうありません。
そのため、エンディングの映像は、虎杖悠仁が望んでいた未来なのではないかと言われています。歌詞内にも出てくる「give it back」は、曲の終盤には「give it a shot」へと変化し、「挑戦してみる」という意味へと変わります。様々な人への想いを背負い、それでも前へ向かって進んでいく呪術師の姿を描いた一曲と言えるでしょう。
第2期第1クールエンディングテーマ:崎山蒼志「燈(あかり)」
2023年7月6日から2023年8月3日まで放送の第2期「懐玉・玉折」のEDテーマ曲は、シンガーソングライターの崎山蒼志が歌っています。2018年インターネット番組に出演し話題となり、2021年にメジャー・デビュー。同年、TVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第5期・2クールのEDテーマをはじめ、大型のタイアップを担当してきました。
自身も原作とTVアニメが好きで、登場人物たちの表情までじっくり見直して制作された本曲。理想に近づくために苦悩する夏油傑の感情の揺らぎに共感してできた一曲です。パラパラと思い出のアルバムをめくるようなドラムマーチの曲調に、途中でひぐらしが鳴き、夏の終わりを告げる心地よいサウンド。〈月は暗い 頭flight〉など韻を踏む独特の言葉が流れるように続き、ふわふわと素朴な歌声がノスタルジーに誘います。
本曲では“他者を尊重すること”もテーマの1つとし、サビでは周りの人たちが夏油へ語りかけているような歌詞に。ED映像も、仲間たちと集う何気ない日々のシーンが尊くて胸にグッときます。感傷的な歌詞も感情的にならず、一言ずつ丁寧に歌っています。
MV映像は、内と外の境が曖昧な縁側が、現実とそれ以外の何処かとの境界線のようで、蝋燭と水面に映る“燈”がゆらゆら揺れて幻想的。見えない者の面影も感じ、寂しくも人肌の温かさを伝えて、哀愁を帯びています。
タイトル「燈」は、「世を照らす」という意味がある仏教用語でもあり、神社仏閣が出てくる本作品の世界観にもマッチ。崎山は仏教にも興味があり、 臨済宗・山側宗玄老師に感銘を受けたようです。
第2期第2クールエンディングテーマ:羊文学「more than words」
第2期第2クール『渋谷事変』のEDテーマは、塩塚モエカ(Vo・G)、河西ゆりか(Ba)、フクダヒロア(Dr)からなる3ピースオルナティブロックバンド羊文学が担当しました。2020年にメジャーデビューし、2022年に放送されたTVアニメ『平家物語』のOPテーマ「光るとき」で知名度を上げました。
監督から「どん底の現実に直面する虎杖の『帰る場所』になれるエンディングを」というリクエストがあり、「深い絶望にいる虎杖へ、どうしたら手を差し伸べられるのか」と思いを巡らせて制作されています。ストリーミング再生回数3000万回を超え、バンド史上最大のヒット曲となりました。
心臓の鼓動のような静かなドラム音で始まり、緩やかに光が差す空気が漂うサウンドです。3人が奏でる音とコーラスが穏やかに高揚し、その共鳴には心を奪われます。後半に向けて力強さを増して、辛い運命でも生きていく、という生命力を感じさせます。
歌詞も、苦しい現実にもがく様子を美しく描いています。人の言葉や損得勘定に左右され、正解探しは簡単だけど、それで心は満たされるのか。自分で自分を不自由にしている鬱屈とした心情と重圧の中、〈どんな暗闇だって照らすライト あなたがいること〉と、自分に寄り添ってくれる人の存在を信じ、本当の心を見失わない前向きな変化を綴っています。塩塚も「最後の一歩を踏み出す力をくれる曲になったと思う」と語っています。
虎杖・伏黒・釘崎の高専1年生チームがインスタントカメラを持って渋谷を散策するED映像も胸にグッときます。思い出をかき集めたような色褪せた映像で、普段は気持ちを素直に言葉にしない3人の言葉を超えた絆の強さを感じ、本編鑑賞後の興奮冷めやらぬ視聴者をノスタルジーに浸らせます。
一発撮りのパフォーマンスを配信するYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」でも羊文学は本曲を披露しています。1年生チームのように、3人も息と音が呼応して、まさに“言葉以上の絆”を証明しています。
『渋谷事変』は実在する渋谷が舞台ということもあり、メンバーは、渋谷スクランブル交差点のライブカメラを眺めたり、現地に行ったり、夜の渋谷に合うプレイリストを作ったりして制作しています。だからこそ、本曲は、無機質な都会の冷たさの中でそっと触れてくる温かさが際立って、無数に輝く夜景に一際輝く光を見出している気がします。
「光るとき」を収録した2022年発売のアルバム『our hope』は「第15回 CDショップ大賞2023」大賞〈青〉を授賞し、2023年12月には「more than words」を収録した4thアルバム「12 hugs (like butterflies)」も発売。2023年6月に台北で初の海外ワンマンライブを開催し、羊文学の光と音のアンサンブルがアジアを中心に海外にも届けられています。
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映画『劇場版 呪術廻戦 0』主題歌・エンディングテーマ
漫画『呪術廻戦』の0巻に当たる前日譚を原作とし、2021年に公開された『劇場版 呪術廻戦 0』。特級呪術師の一人である乙骨優太を主人公に、交通事故で亡くなった直後に特級呪霊となった祈本里香との物語。本劇場版には主題歌とEDテーマ曲が使用され、いずれも4人組バンドのKing Gnuが書き下ろしました。主人公の乙骨憂太と里香の一途な想いを表現した2曲です。
主題歌:King Gnu「一途」
死亡直後に憂太に取り憑く里香、呪いを解くために高専に入学する優太。子どもの頃に結婚を誓い合った2人の愛を表すような主題歌です。高速でかき鳴らす歪むギターから始まり、終始、疾風迅雷のごとく激しいサウンド。歌詞にも〈帳/あなたにあげるよ全部全部〉など、物語を連想させる言葉を含めつつ、一言一句で普遍の愛を語っています。常田大樹(Vo, Gt)の低音の歌声をメインに、井口理(Vo, Key)の高音の歌声が重なり駆け抜ける。誰にも入る隙がないほど、盲目のラブソングになっています。
本劇場版は2022年「第45回日本アカデミー賞優秀アニメーション作品賞」を受賞し、シングル発売した「一途/逆夢」も『第64回 輝く!日本レコード大賞』の「特別賞」を受賞。作品も曲も2021年の顔として輝きました。
エンディングテーマ:King Gnu「逆夢」
主題歌「一途」と反した壮大なバラード曲「逆夢」。井口理の歌をメインに、大切な人のために命さえ捧げる究極の愛を歌っています。当たり前の日常が次の瞬間には壊れてしまう恐怖、愛しすぎる故の呪いや憎しみなど、歌詞には本劇場版の優太と里香の関係性を思わせるだけでなく、常に“愛と死”が隣同士に存在することを感じさせます。
本曲のストリングスは常田の兄・常田俊太郎がアレンジを担当。ピアノとともに、バンドの音に壮麗な美をまとわせて、常田大樹の深みあるコーラスが祈るように響いています。
劇場版の主人公・乙骨憂太の声を務めた緒方恵美が、2022年に声優活動30周年を迎えたことを機に、King Gnuの「逆夢」をカバーしています。憂太が里香へ愛を捧げているように、優しく力強く切なく、緒方が語るように歌い、涙を誘い鳥肌も立つカバーになっています。
2023年2月15日発売のアニソンカバーミニアルバム「アニメグ。30th」に収録し、他にも、彼女が蔵馬役で声優デビューした作品『幽☆遊☆白書』のOPテーマ曲「微笑みの爆弾」、碇シンジ役を務めた『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の主題歌「One Last Kiss」など6曲をカバー。各曲に改めて、唯一無二の命を吹き込んでいます。
まとめ
ここまでアニメ「呪術廻戦」のオープニングテーマ・エンディングテーマを解説しました。アニメの世界観をより深いものにし、ハッとするような伏線が張り巡らされていることもある楽曲。
2023年12月29日、第2期「懐玉・玉折/渋谷事変」最終話放送後、第3期「死滅回游」の制作決定も発表されました。「渋谷事変」の呪霊によって街が壊れ、術師同士の殺し合いが行われる「死滅回游」。第2期「渋谷事変」OPテーマのKing Gnu「SPECIALZ」の〈報道機関氣裸氣裸血走ります〉の歌詞のように、渋谷から都内全域が荒れに荒れるのか、乞うご期待。
掘り下げるほどに新たな面が見え、とても興味深いものですよね。アニメを視聴するときには、ぜひ楽曲にも注目してみてくださいね。
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