Official髭男dism(ヒゲダン)のおすすめソング10曲が示すJ-POPの未来

Official髭男dism(ヒゲダン)のおすすめソング10曲が示すJ-POPの未来

Oficcial髭男dismさんの新曲『パラボラ』とってもいいね!
他の名曲も知りたくなったなあ……。

CMにも使われている曲だね!
そんなキミにヒゲダンのおすすめ10曲を紹介するよ。

ありがとう!
これを機にヒゲダンの沼にハマってみるよ!

今回はOfficial髭男dismの名曲を10曲ほどご紹介しながら、彼らが見据えているJ-POPの未来への展望を明らかにします。

Spotifyでプレイリストも作成したので、ぜひ曲を聴きながら記事をご覧ください。

Official髭男dismとは……?


藤原聡(ボーカル/キーボード)小笹大輔(ギター)楢崎誠(ベース)松浦匡希(ドラムス)島根大学で結成された4人組のピアノポップバンドで、インディーズからメジャーへと活動の幅を広げながら、押しも押されもしない時代の寵児たちに成長しました。

今やCDというマテリアルは過去のものになったのかもしれません。Official髭男dismはまずインディーズ・レーベルから活動を開始しました。

インディーズ・レーベルは一般にメジャー・レーベルと比べるとCDの流通という点で大きなハンディキャップを背負っていたものです。

そこで彼らはいち早く配信サービスでの楽曲販売に力を注ぎました。配信サービスへの楽曲登録はインディーズであろうとメジャーであろうと登録に掛かる経費やその他の手続きはまったく変わらないのです。

Official髭男dismは音楽配信サービスでの利点を最大限に活かして山陰地方から日本全国区のバンドへと急成長します

配信サービスやYouTubeなどのネット媒体で如何にファンを拡大してゆけるか。近年、新世代のアーティストとして大注目を浴びている人々は皆、この点をクリアしているのです。

Official髭男dismを筆頭に米津玄師、あいみょん、King GnuがJ-POPの世界を一新してしまいました。それぞれのアーティスト、バンドの魅力自体はバラバラなのですが、ファンの支持は重なっているように思えるのも新しい現象でしょう。

ただ、Official髭男dismの楽曲を仔細に見てゆくと、歌詞に新しい世代に固有の感性が浮き上がってきます。

いまなぜこれほど熱狂的にOfficial髭男dismの楽曲が求められるのか。

前置きが長くなりましたが、これからご紹介する極めつけの10曲を分析してOfficial髭男dismの深い魅力に迫りましょう。

詳しいプロフィールはこちらから!

ご紹介する10曲はランキング形式のものではなく順不同です

Official髭男dismのおすすめソング10選

「I LOVE…」


2020年2月12日発表、Official髭男dismの通算4作目のCDシングル

若いリスナーにとっては爽やかで新鮮なピアノ・ポップに聴こえると思いますが、1980年代の洋楽を好んで聴いている人にとっては懐かしいAORの味わいが深く染み込んでいくはずです。

とはいえ歌詞を覗き込むと意外な印象を持たれるかもしれません。
男女の青春と愛の風景なのですが、思いの外、ここでの歌詞は大人の愛が醸し出す非常にビターなものになっているのです。

レプリカばかりが飾られた銀河 カーテンで作られた暗闇
嘆く人も居ない鼠色の街の中でI Loveその証を抱き締めて

喜びも悲しみも句読点のない想いも完全に分かち合うより 曖昧に悩みながらも 認め合えたなら
I LOVE…/作詞:藤原聡 作曲:藤原聡

Official髭男dismの楽曲のほぼすべてをボーカルの藤原聡が作詞作曲しています。

彼が書く歌詞は非常にバラエティに富んでいるのが実際です。

「I LOVE…」では華やかな恋愛の風景ではなく、男女のお互いの個性を尊び合いながらギリギリのラインで愛を確かめ合うふたりが描かれます。

藤原聡に限らずOfficial髭男dismのメンバーには社会人として働いていた過去があるのです。藤原聡に至っては銀行の営業マンでした。

そのため彼が描く愛にはどこか地に足がついたリアルな触感があります。もちろんOfficial髭男dismの楽曲はこうした歌詞ばかりではないです。それでもなぜ彼らの楽曲が支持されるのか。

その魅力の一端に「I LOVE…」の歌詞に見受けられるような「絵空事ではない」愛の情景描写があります。

「宿命」


2019年7月31日発表、Official髭男dismの通算3作目のCDシングル
彼らの代表曲の中でも重要な一曲でしょう。Official髭男dismの楽曲ではこの曲が一番大好きだというファンも非常に多いです。

ここでも藤原聡は少々尖ったものの見方を歌詞に反映させています。

沈黙が続いたイヤフォン
自分の弱さに遠ざかってく未来
「大丈夫」や「頑張れ」って歌詞に
苛立ってしまった そんな夜もあった
宿命/作詞:藤原聡 作曲:藤原聡

藤原聡にとって一番の関心事は音楽なのでしょう。
彼は人生のほぼすべての場面で何かしらの音楽と会話を交わし続けていました。

一方で彼のリアルな社会生活の中で、その音楽に付随する歌詞がどうにもマッチしないような心境にさせられたのです。

綺麗事を並べた既存のJ-POPへの批判とも思しき歌詞を彼は紡いでします。批判とは対象と彼との距離を反映するでしょう。
Official髭男dismの楽曲「宿命」はそれ自体がJ-POP批判のJ-POPであり、まさに新時代のアーティストであることを宣言しているのです。

どうぞその辺りをよく聴き遂げてください。

「ノーダウト」


2018年4月11日発表、Official髭男dismのメジャーデビューシングルです。
小気味よい3分のピアノポップソングになっています。Official髭男dismのメジャーシーンへのご挨拶の一曲です。

ピアノの音色こそ懐かしいAORの響きを感じるでしょうが、サウンド全体は非常にモダンな仕上がりになっています。
歌詞を覗いてみると、これもまたユニークな側面が煌めいているのです。

早くデマカセに気づいて 騙してたわけに気づいて
誰に何度裏切られても目を覚まして 笑って
one more time

Let me show 神様もハマるほどの大嘘をoh誰もハリボテと知るよしもない 完璧な
Lie and lie lie and lie そして少しの愛で
Let me show 欲張りのその向こうを
ノーダウト/作詞:藤原聡 作曲:藤原聡

ここで藤原聡はOfficial髭男dismのエンターテイメントとは何かを紹介してくれているようです。もしくはこの国の世相への皮肉った側面も反映されているのでしょう。

楽曲のタイトルは「ノーダウト」、つまり嘘はないというものです。しかし歌詞の方には嘘の効用のようなものをしっかりと認めてもいます

全知全能の神でさえも欺いて、欲望の向う側にあるものが観たいと藤原聡は願うのです。メジャーデビューシングルという出自がどこまでも大事な楽曲でしょう。

Official髭男dismは「ノーダウト」でありながら、虚実入り交じったこの世界を照らしてみせるという意気込みに燃えています。
虚実入り交じっているからこそ、この世界にあっては嘘のない存在でいられるというかなり高度な弁証法を駆使しているのです。

「ESCAPADE」


2018年4月11日発表、Official髭男dismの最初のオリジナルアルバムに収録曲。

華やかなブラスサウンドが魅力の楽器です。こうしたゴージャスなサウンドをインディーズ・ベースで発表できるのですから時代は変わりました。

音作り・歌唱・演奏のすべてがメジャーレーベルのアーティストと遜色ないレベルに達しています。
彼らが如何にメジャーデビュー前から完成の域にあったかを思い知らされるでしょう。

何度見つめても足りない
指でhold me tight
まるで夢みたい
ESCAPADE/作詞:藤原聡 作曲:藤原聡

歌い出しの歌詞から抜粋しました。
読んでいただくとお分かりのように藤原聡は盛んに韻を踏んでいます。

ヒップホップ以降のアーティストであることの証でしょうか。もしくは桑田佳祐などのJ-POP王道のアーティストのDNAが花開いているのかもしれません。

とにかく彼はハッピーな歌詞の場合は極力、韻を踏もうと試みるのです。
インタビューなどを見ると内容からかけ離れた韻までは追求しない、それでも可能性があるところでは韻を踏んでいたいとのこと。

音韻というものは音楽的な要素が反映するものです。作詞家としても常に音楽のことを考え続けている藤原聡の良心が透けます。

「ビンテージ」


2019年10月9日発表 、Official髭男dismのメジャーデビューアルバム「Traveler」収録曲

アルバム収録曲ながら非常に人気がある楽曲です。オルガンの音色が印象的なメロウなサウンド。

酸いも甘いもって言えるほど
何も僕ら始まっちゃないけれど
褪せた思い出もビンテージなんていって
振り返る度に笑えるようにと大切に日々を重ねよう
ビンテージ/作詞:藤原聡 作曲:藤原聡

「ビンテージ」というタイトルを回収する箇所を抜粋いたしました。音楽家にとって「ビンテージ」という言葉はとても大事なものです。

彼らにとって身近な 「ビンテージ」とは ワインでもおもちゃでもなくビンテージ楽器でしょう。
もの造りがしっかりしていた時代の楽器と経年変化による独特の枯れた音色は「ビンテージ」でしか味わえません。

藤原聡は男女の歴史もそうした「ビンテージ」の味わいを持てるように長く続くことを願うのです。
彼の頭の中には常に音楽のことが第一になっていて、何事も音楽でのことに還元しないと気がすまないのでしょう。

破綻がない分、安心して聴けるラブソングに仕上がっています。

「イエスタデイ」


2019年10月9日発表 、Official髭男dismのメジャーデビューアルバム「Traveler」のオープニングナンバー

ストリングスの音色が美しく、また彼らに固有な洋楽やAORへの憧憬は後景に引き下がった楽曲です。
これがOfficial髭男dismのオリジナリティあるサウンドだという楽曲でメジャーデビューアルバムを開始しました。

バイバイイエスタデイ ごめんね 名残惜しいけど行くよ
いつかの憧れと違う僕でも
ただ1人だけ 君だけ 守るための強さを 何よりも望んでいた
この手に今
イエスタデイ/作詞:藤原聡 作曲:藤原聡

タイトルの「イエスタデイ」を回収する箇所を抜粋いたしました。
ここでは過去のOfficial髭男dismの歩みには囚われないで前へゆこうというバンドの意志を反映させています。

この記事の執筆時点では最新のアルバム「Traveler」のオープニングナンバーです。
新しい自分たちを楽しんで欲しいという強い想いや願いを普遍的なラブソングの中に結晶させました。

バンドにとってもリスナーにとっても大事な楽曲でしょう。

「Stand By You」


2018年10月17日発表、Official髭男dismの通算2作目のEPのタイトルナンバー

メジャーレーベルでの最初のEPでもあります。ビリー・ジョエルのようなピアノサウンドやハンドクラップが印象的です。

楽曲全体に1970年代後半から1980年代初頭の洋楽のテイストが溢れています。
しかしその時代を知らない若いリスナーには新鮮なサウンドとして受け止められるでしょう.

Stand By You いつもStand By You
涙のターミナル Uh Uh 並んで立っている
Stand By You いつもStand By You
未来がハイになる Uh Uh 君と歌になる
Stand By You Oh Oh 眠らない街の喧騒を抜け出して Yeah
Stand By You Oh Oh 光溢れた夢の続きは君と共に
Stand By You
Stand By You/作詞:藤原聡 作曲:藤原聡

クライマックスの歌詞から抜粋いたしました。

実際に楽曲を聴いていただけるとより分かりやすいのですが、ここでも言葉が持つ音韻へのこだわりを顕にするのです。

非常に小気味好いサウンドと口と耳にとって馴染みのよい言葉を連発させます。

Official髭男dismの歌詞の多くはラブソングの体裁を採っているでしょう。
ただ、不思議なことにその愛の実感というものは程よいテイストにとどまるのです。

愛がもたらすドロドロした質感のようなものを藤原聡は表現しようとしません。明るさというものに修練するような愛を描くのです。

「What’s Going On?」


2016年11月2日発表、Official髭男dismの最初のEPのタイトルナンバー

Official髭男dismの楽曲の中でも一番の問題作といっていいかもしれません。

タイトルの「What’s Going On?」について洋楽ファンは馴染みがあるでしょう。マーヴィン・ゲイの代名詞的な反戦歌「What’s Going On」を下敷きにしています。

とはいえここで藤原聡が描いた戦争というものは、より現代的で皮相かつ悲壮なものです。

ねえどうして人は言葉で人を
殺せるようになってしまったんだろう?
画面から飛び出した文字はナイフみたいだ

過去にもこうやって人生めちゃくちゃにされて
大切な仲間が1人 命を絶ってしまった
What’s Going On?/作詞:藤原聡 作曲:藤原聡

インターネットやSNSでの言葉のやり取りという戦場を藤原聡は描きます。

誰かからの誹謗中傷に心を痛めて自殺してしまった友人のために、悪意について心からの憤りを藤原聡が歌い切りました。

彼の言葉がここまで重く、どこか救いすら見出せない悲痛さを持っているのはこの曲だけかもしれません
Official髭男dismというと華麗なピアノポップバンドというパブリック・イメージがあるでしょう。

しかし彼らの資質がそうした狭い囲い込みに囚われたものではなく、ときには挑発的なメッセージを携えて心に迫ってゆくことを知っておいてください。

「Pretender」


2019年5月15日発表、Official髭男dismの通算2作目のCDシングル

メガヒットになりましたから、この曲で彼らの存在を知った人も多いでしょう。いまさら説明不要な彼らの代名詞的な楽曲でもあります。

ただ、この「Pretender」が感じさせた新しさの本質について、すべて議論が尽くされたとも思われません。

どうぞ歌詞をご覧ください。

感情のないアイムソーリー
それはいつも通り
慣れてしまえば悪くはないけど
君とのロマンスは人生柄
続きはしないことを知った

もっと違う設定で もっと違う関係で
出会える世界線 選べたらよかった
もっと違う性格で もっと違う価値観で
愛を伝えられたらいいな そう願っても無駄だから
Pretender/作詞:藤原聡 作曲:藤原聡

Official髭男dismと藤原聡の感性の新しさが際立つラインです。
まず気になるのが「設定」や「世界線」という言葉でしょう。

藤原聡は君との関係について「設定」や「世界線」が違わないと結ばれないと、すぐに諦めてしまう僕を描くのです。
愛はどのような障壁も超えて叶えるものだという精神論をいとも簡単になし崩しにしてしまいます。

藤原聡は「Pretender」の歌詞についてアニメ作品である「STEINS;GATE」から大きな影響を受けたと答えているのです。
この「STEINS;GATE」は「1」という数値を超えると 「世界線」が変わるという「設定」になっています。

藤原聡はこうした世界観を華やかなラブソングの中に移入しました。

アニメ文化の世界観が普通になっている世代によるラブソングの登場、それが「Pretender」の本質的な新しさです。ここで描かれる僕は「設定」「世界線」の限界の外へと出ることができません。

一昔のJ-POPの歌詞ではこうしたメンタリティを軟弱として退けていたはずです。

しかしOfficial髭男dismはこの「Pretender」で若い世代から圧倒的な支持を得ます。

そこにはアニメに影響を受けたということだけではなく、現在の自分のキャパシティに限界を設けてしまうリアリストとしての表明が隠されていたのです。

Official髭男dismが表明する感性の新しさというものの本質はこの辺にあるんだナ。

「パラボラ」


2020年4月10日発表、Official髭男dismの通算3作目の配信シングルです。

新型コロナ・ウィルスの影響により、日本で初めて緊急事態宣言が施行された2日後に発表された楽曲
とはいえ制作していた時期はこの未知の疫病についての影響はなかったようです。

サウンドも彼ら固有の華やかものですし、歌詞もあくまでも前向きなものになっています。

たがいちがいに歩き出した 僕の両足は
どんな未来のアスファルト踏みしめていくんだろう?
靴底を擦り減らして ドアの向こう側
まだ遠くて 不確かで ぼやけてる理想像も
追い越すような軌跡を描いていけるよ
そして遥か先をゆく
どっかの僕が迷わないように
眩い光放ってみせるよ いつかきっと いつかきっと
パラボラ/作詞:藤原聡 作曲:藤原聡

制作の際にコロナ禍の影響がなかったことで、不思議とアフター・コロナの希望が溢れる世界の歌になってしまいました。

こうした世界とのリンクはOfficial髭男dism自身が望んだものではないかもしれません。

しかしこの曲をありのままに楽しめるようになる未来。特にライブ会場でこの曲をリスナーとともにシェアできる明日というものを、どうぞ存分に想像してみましょう。

そのことによってOfficial髭男dism自身がまとっている新世代のアーティストとしての意匠はよりはっきりとしたものになるはずです。

この記事執筆時にとって彼らの最新の楽曲。人類が疫病を乗り越えた世界の様相がここに描かれているようで眩しいです。

Official髭男dismにハマってみよう!


Official髭男dismのこの10曲をご紹介してきました。

彼らの作品の中でももっと聴きたい楽曲が他にもあるはずです。皆さんはどの楽曲をOfficial髭男dismの10曲としてセレクションするでしょうか。

この記事を読んでいただいて、皆さんそれぞれの10曲を考えるきっかけになれば嬉しいです。

いずれにしてもOfficial髭男dismがJ-POPの新時代を担うアーティストの中でも 特に重要であることを確認していただけたらと思います。

ここまで読んでいただいてありがとうございました。

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