Official髭男dism『宿命』 – 【楽曲解説】現代を生きる我々に向けた応援ソングの魅力とは!?

Official髭男dism『宿命』 – 【楽曲解説】現代を生きる我々に向けた応援ソングの魅力とは!?

Official髭男dismは2012年に結成された4人組のバンドです。

メジャーデビューから瞬く間にシーンを席巻し、今や日本のトップチャートに君臨する存在と言えるでしょう。

数々のヒット曲の中から今回取り上げるのは、2019年の7月にリリースされた『宿命』です。

2019年のテレビ朝日系列局の番組『熱闘甲子園』のテーマソング(2019ABC夏の高校野球応援ソング)として書き下ろされた『宿命』は、

「夢や目標に向けて努力している!」
「辛いこともあるけど毎日頑張っている!」

そんな日々を過ごしている人の心にきっと響く、珠玉の応援ソングに仕上がっています。

本記事では、サウンドの魅力、そして歌詞の魅力の2点から『宿命』の魅力に迫ります。

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宿命・サウンドの魅力:心躍る熱狂と胸惹かれるスマートさ

Official髭男dismはブラックミュージックを中心として様々な音楽から影響を受けており、『宿命』もまた数多くのジャンルのエッセンスを取り入れています。

そして、「これぞまさしく高校野球の魅力!」と言いたくなるような青春と熱狂の坩堝へと我々を誘ってくれます。。

ゴスペルとファンク:高揚感と衝動、誰の心にもある熱狂

『宿命』のひたむきな情熱を形作っているのは、作品全体を覆うゴスペル的な祝祭の雰囲気です。


弾むようなリズム感とスピリチュアルさを兼ね備えたピアノ
軽快に響くフィンガースナップ
ソウルフルに響き渡るボーカル

等々がワクワクするような高揚感を楽曲に与えています。

また、エネルギッシュなホーンセクションとグルーヴィなベースラインもこの曲が人々を熱狂させるための重要な要素の一つです。

ファンク由来の肉感的なフレーズや音色から得られる躍動感が、身体を動かしたくてウズウズしたくなるような衝動を創り出しています。

『宿命』におけるゴスペルとファンクの要素は、心と身体に響き渡る熱狂を生み出す触媒として作用していると言えるでしょう。

洋楽のトレンド的ビート

ゴスペルとファンクとは毛色の異なる音楽的影響も重なることで、『宿命』の魅力はさらに深みを増しています。

それは何か?楽曲の屋台骨であるビートです。

最新のUSヒットチャートのトレンドを取り入れたスマートなリズム、R&B/EDM/ヒップホップの影響を昇華した都会的なプログラミング・ビート。

トラップ的なハイハットを含め、世界基準の最先端サウンドにも丁寧な目配りをすることで、青春の情熱がたぎる『宿命』に垢抜けたクールさを添えています。

『宿命』には、実に多彩な音楽的バックグラウンドが織り込まれているのです。

J-POPとしての魅力:様々なジャンルの結晶化

多様な音楽的影響が化学反応を起こし、『宿命』はまばゆい輝きを放つJ-POPソングとして結晶化しています。

AメロからBメロ、そしてサビへと突き進むようなドラマティックな展開も、エモーショナルに響く力強いメロディラインも、心の奥底に響き渡るような鮮烈さを放っています。

Official髭男dismは彼等が敬愛するJ-POPアーティストたちにも引けを取らない、胸を打つサウンドを完成させています。

宿命・歌詞の魅力:高校球児だけではなく、全ての夢や努力に。

全ての努力やひたむきさへ

『宿命』には『熱闘甲子園』のテーマソングにふさわしい、高校球児や彼等を応援する人々の心情を描いた歌詞が綴られています。

同じ夢を抱く仲間たちとの友情や青春のまぶしさを感じさせる「心臓からあふれ出した声で 歌うメロディ 振り向いた未来 君から あふれ出した声と 合わさって響いた 群青の空の下」という一節は、その典型的な例でしょう。

一方で、高校球児以外の人でも日々感じるような等身大の言葉が散りばめられているのも『宿命』の素敵なところです。

「自分の弱さに遠ざかっていく未来 「大丈夫」や「頑張れ」って歌詞に苛立ってしまった そんな夜もあった」「緊張から不安が芽生えて 根を張るみたいに 僕らを支配する」という言葉には、共感を覚える人も多いかもしれません。

そして、サビで歌い上げられる「奇跡じゃなくていい 美しくなくていい」「魂の限り 宿命ってやつを燃やして 暴れだすだけなんだ」という歌詞にこそ、『宿命』が人々を惹きつける魅力の核心があると言えるでしょう。

『熱闘甲子園』のテーマソングとして見事にハマる言葉選びでありながら、誰の努力にも等しく祝福を授けるような表現にもなっています。どんな人間にも自分だけのテーマソングとして響くような普遍性を感じずにはいられません。

甲子園で繰り広げられる青春群像劇はもちろんのこと、努力やひたむきさが必要となる人生のあらゆる局面において前に進む力を与えてくれる一節ではないでしょうか。

Youtubeにアップされている『宿命』のMVのコメント欄にも
・「優しく背中を押してくれる」
・「一緒に向こう側に行ってみようと言ってくれている感じ」
・「受験の時に聴いていた」

といった称賛のコメントが寄せられています。

最後の一節:青春の日々、大人になること

また、ボーカルの藤原聡さんが「誰しもが背負っている宿命を描きたかった」とインタビューで語っているのも注目すべきでしょう。

宿命とは「生まれる以前から定まっている運命(※精選版 日本国語大辞典より引用)」を意味する言葉です。

運命よりも重たい意味を持つ宿命に対し、この楽曲の歌詞は「宿命ってやつを燃やして 暴れだすだけなんだ」と激しい反抗の決意が繰り返し宣言されています。

しかし、最後の一節だけは「ただ、宿命ってやつをかざして 立ち向かうだけなんだ」となっています。

どうにもならない宿命を「燃やして」しまうのではなく、ひょっとしたら自分の一部として受け入れるように「かざして」、戦い方も「暴れだす」のではなく「立ち向かう」。

毅然とした佇まいを感じさせる言葉が並んでいます。

最初はまるで正面衝突するように宿命と戦う若々しい言葉を繰り返していました。

サウンド面での祝祭的な熱狂はそのままに、最後に成長を感じさせる歌詞が綴られているのです。

後に残る余韻は、壮大な高揚感とわずかな苦み。
だからこそ、複雑な味わいを感じます。

ただの青春ソングや普通の応援ソングでは終わらせない結末に、Official髭男dismの類まれなるセンスが発揮されていると言えるでしょう。

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