ということで今回はジャニーズラップの魅力を紐解くため、嵐の櫻井翔さん、SixTONES(ストーンズ)の田中樹さん、HiHi Jetsの猪狩蒼弥さんにフューチャーしていきます。
この記事を見ている方には、櫻井翔さん、田中樹さん、猪狩蒼弥さんのファンの方や、ジャニーズやジャニーズのラップに興味のある方などが多いと思います。
この記事を読めば、ジャニーズのラップの歴史において特に際立った活躍をし、才覚を発揮した3人についての魅力を知ることができます。
また、活動年数や披露したことのある曲数の都合上、櫻井翔さんに関する文量と田中樹さん、猪狩蒼弥さんに関する文量で差が出てしまっている点、また未音源化曲について多く扱うため、正確な歌詞でない可能性がございますので、その点をご容赦いただけると幸いです。
それでは早速見ていきましょう。
目次
櫻井翔:ジャニーズラップ最初で最後のパイオニア
櫻井翔のラップについて
1人目は当然この人。ジャニーズにラップという文化を持ち込んだ先駆者であり、「ジャニーズのラップの代名詞」ともいえる存在、嵐の櫻井翔さんです。
櫻井翔さんは嵐のデビュー曲「A・RA・SHI」からラップを担当していますね。今ではニュースキャスターなどを務めたり、ザ優等生という雰囲気の櫻井さんですが、Jr.時代はへそピを開け、髪をドレッドにしていたりと、今日の姿からするとちょっと意外な歴史があります。
※補足1 7/31
以前、「ギラギラした服装を好んでいたりと」という記述がありましたが、「服装自体はそのような類のものではないのではないか」というご指摘をいただいたので、該当部分を削除させていただきました。大変失礼致しました。
櫻井さんを慕うジャニーズ内の集団、「櫻井会」で射程的な立ち位置にいるKAT-TUNの上田竜也さんも、「アニキ(櫻井さんのこと)は悪のカリスマだった」と称するほどでした。櫻井会には他にもSexyZoneの菊池風磨さんがいたりと、安定の治安といった感じです
音楽の嗜好にもその性格は影響しており、雑誌でのインタビューでは「自分がヒップホップに興味を持ったのは中学3年生の頃、日比谷の野音の大きなイベントがきっかけ」と語っています。
そんな青春時代をHIPHOPの文化と共に歩んできた櫻井さんが、グループの中でラップ担当になるのは必然の流れであったのかもしれませんね。
しかし初めからラップ詞を櫻井さん自身が書いているわけではありませんでした。今ではラップ詩は全て自身が作詞していますが、最初の数曲は作詞の方が作られた歌詞を歌っているというスタンダードなもの。
そこで当時交流のあったm-floのVERBALさんから「せっかくラップやってるなら自分で歌詞書き書いてみたら?」という言葉はかけられ、そこから自分の作詞した曲が音源化されたり、コンサートでパフォーマンスされるようになりました。
初めて櫻井さんのラップ詞が採用されたのは、2003年にリリースされたシングル「言葉より大切なもの」です。
櫻井さんのラップは通称サクラップと呼ばれていますが、このサクラップはまごうことなき1990年代~2000年代初頭の日本語ラップの血筋を継承したものになっていると思います。
日本語としての表現、言葉の重みに拘り、自身の思想をストレートに言葉にぶつけ、独自の世界観を作り上げるその姿は、当時のラップシーンによく重なります。
当時櫻井さんがラジオで待っていた冠番組「SHO BEAT」では、毎週櫻井さんがピックアップした楽曲を流すのですが、その選曲もまさに日本語ラップ聴衆にとって刺さるものがチラホラとあり、彼のヒップホップ文化へのリスペクトを強く感じました。
また同ラジオ内やソロコンサート内でBlack Eyed PeasのWhere Is The Loveに、自身の当時の思いを日本語ラップ詞として乗せたカバー版を披露するなど、日本語ラップだけでなく海外の本場のヒップホップシーンにも関心があったことが伺われます。
こちらのカバーは原曲のテイスト同様に戦争についての想いを書き下したものになっていますが、ジャニーズ内でこのような話題にダイレクトに触れ、かつ自身の思っているところをそのまま歌詞にぶつけていたのは本当に異例なことで、ここでも櫻井さんの一貫した思想を垣間見ることができますね。
それでは次に、櫻井さんのラップ曲で特にお勧めのものを紹介していきます!
Hip Pop Boogie:サクラップの象徴としての一曲
この曲は櫻井さんのソロ曲の中でも特に人気と知名度が高い楽曲であり、ファンの投票で披露する楽曲が決まるアラフェスでは櫻井さんのソロ曲枠として見事に選ばれていましたね!
この楽曲は2008年発売の「Dream”A”live」に収録されており、発売当初から絶大な人気を誇っていました。
曲調としては、おそらく櫻井さんの音源化されたソロ曲の中では最もヒップホップ色の強いもののうちの一つであり、そのフロー、韻の踏み方、リリックの内容やそこら中に散りばめられた言葉遊びなど、まさにサクラップを代表する楽曲と言っていいんじゃないかなと思います!
櫻井さんは、「アイドルであっても俺はヒップホップが好きだ」という内なる想いを感じさせる瞬間が垣間見えますが、まさにこの曲もそんな心情を根底に感じることができます。
また題名が「Hip Pop」 となっていますが、これはHip Hopへの敬意を払いつつ、それでも自分はアイドルであるということにプライドを持ち、Hip Hop とPopsの融合としてこの曲を捉えるためにつけられた櫻井さんの造語となっています。
Anti Anti:外野に向けた挑戦状
この曲は2004年のコンサート「いざッ、Now」で披露されたものであり、こちらも、ha-jさんが作曲したものとなっています。
このAntiはその名の通り日本語でもアンチ、批判者と言った意味ですが、ここでのアンチとはジャニーズ、嵐に対するアンチを意味しています。
ジャニーズなのにヒップホップしていることであったり、単にジャニーズに所属しているからというだけで批判的な意見があることは致し方なく、このような批判的な意見は何時の時代、どのような内容であっても一定数存在してしまうものです。
そこに焦点を当て、真っ向から曲でアンサーを送る櫻井さんに、ここでもヒップホップイズムを感じずにはいられませんでした。
前述のHip Pop Boogieでは、「アイドルだけどヒップホップが好きだ!」という心情が根底から感じられると書きましたが、この曲はそんな思いを存分に爆発させた、彼の熱情の塊の具現化とも言える楽曲になっています。
なんども書いてしまいますが、本当に当時これほど自己の主張をまっすぐに作品として、しかもラップで伝えるジャニーズなどいなく、初めて見た時の衝撃と胸の高鳴りは今でも忘れませんね。
ペンの指す方向:櫻井翔という人間の真骨頂
こちらのペンの指す方向は、ChpterⅠ,Ⅱ,Ⅲと三つに分かれているシリーズであり、私事ながら、自分がもっとも好きな曲の一つです。
ChapterⅠは自身が慶應大学を卒業する機に、仲の良い友人達や弟の声なども収録し作った卒業ソングになっています。
櫻井さんは小学校から慶應義塾の付属校に通っていたので、友人たちとは子供の頃からずっも同じ時間を過ごしていたんですね。そんな櫻井さんにとって、学生生活が終わるのは他の誰よりも感慨深かったこと。そんな気持ちがこの曲からは感じられます。
またこの曲は、歌詞から見ても櫻井さんのラップ人生の中でも特に重要な位置を担っていると考えています。
「動き続ける長針と短針は」
「振り返ってみるといやに短期間だった」
とい部分から分かる通り、2004年2月に発売された嵐のシングル「PIKA☆☆NCHI DOUBLE」のラップ詞とほぼ同じフレーズがあります。
櫻井さんはこのように自身の作った歌詞を部分的に他の曲でも流用するといったセルフサンプリングのようなことをしばしばしていますが、ファンとしては「大好きだったあの曲の魂が流れてる…!」となって感激の嵐です。
櫻井さんが大学を卒業したのも同じく2004年であり、正直どちらの曲が先に出来たのかわかりませんが、卒業する友人たちにこの曲を配ったりするなど、思い入れの深い曲、歌詞であることは間違いないですね。
個人的に曲を作ったのはこれが1番最初と語っており、そのせいもあってかCD自体は数枚ほどしか作成せず、身内での共有にとどめていたそうです。
イントロ部分に「サクショウの22歳の誕生日祝って、乾杯ー!」という声が入っているのですが、これも櫻井さんの誕生日当日に撮った友人の方の声だと語っていました。
また曲の中盤、バース2に声変わりのしていない子供のような声と櫻井さんの掛け合いがあるのですが、こちらの声は実の弟さんの声を入れたそうです。
リリック、トラックともに非常にノスタルジックな作品となっており、目をつぶってこの曲を聴けば、秋の紅葉が散り、白い雪が降り積もり、そして夜が明け、今の生活の終わりの近づきを感じる。そんなような感覚に没入していきます。
前述の弟さんのパートでは「今日の給食カレーかな」など小学生と思われる描写から「試験近いな なんかあるいいノート」など大学生活と思える描写までが歌われています。
その期間の時の流れが子供の声で再生されることで、「今とは違う昔」という印象が強まり、よりこの曲に懐かしさ、どことない寂しさを感じてしまいますね。
また「この雪溶けるまでは」「これが最後の夜」「朝の日が俺ら照らすまでは」などの部分からは、これまでの時間を懐古しながらも、残された最後の時間である「今」を噛み締めている、そんな気持ちが伝わってきます。
とにかく櫻井さんのソロ曲の中でトップクラスに名曲なのは言うまでもなく、心揺さぶる作品ですね。
そして、こちらのトラックもha-jさんが作曲されたものになっており、ha-jさんのお宅で朝まで一緒に曲作りに励んだとラジオで語っています。
また後述する「joyful」という曲をそのままバース1に持ってきている構成となっており、当時SHO BEATで初披露された際はまだ曲名が決まっていなかったので、「joyful完全版」と暫定的にされていました。
また曲名にもなっている「ペンの指す方向」というワードですが、これは慶應義塾大学の校章を引用しているのではないか、または自分の今までの人生を形成する上で重要な位置を占めてきた勉強というものが導いてくれる道を意味しているのではないか、などと当時個人的には推測していました。
そしてChapterⅡはChapterⅠの数ヶ月後に、友人に向けて作った応援曲になります。
ChapterⅠが学生生活の最後を見送る曲、ChapterⅡが社会人としての人生を応援する曲となっており、このストーリだけでもファンとしてはグッとくるものがありますね。
一番の歌詞では、自身が学生をしながらジャニーズJr.としての多忙な生活を送っていた頃を懐古しながら書かれており、2番の歌詞では就職活動中に悩む友人の、不安とやる気が渦巻く複雑な世界の話が書かれています。
こちらの楽曲はボブマーリーの「No woman no cry」のサンプリングとして作られており、「Everything’s gonna be all right」という歌詞が何度も登場しています。
苦しい時期を過ごす友人に対しても、何かを頑張る全ての人にとっても、一歩一歩進んでいけばきっと全て上手くいくから、泣く必要はないんだよという想いを伝えようとしているのが感じられますね。
ChapterⅠと打って変わってChapterⅡのメロディはどこか懐かしさを感じながらも、全体としては歌詞の通り前向きなものになっており、コンサートの最後に大円団で歌いたくなるような、そんな曲となっていますね。
今回は櫻井さんの弟さんだけでなく、妹さん、さらにはha-jさんとha-jさんの奥さんの声も一緒に録音されているとソロコンで語っていました。
ChapterⅢは一転変わってリリックもトラックも非常に挑戦的な楽曲となっています。
Ⅰがノスタルジック溢れた心揺さぶる曲調、Ⅱがこれからの輝く未来を歌った明るい曲調、そしてⅢでは「俺たちはまだまだ満ち足りてねえ、これからもっと上を目指して、お互い成長した姿で頂上で会おう」というような野心に満ちた曲調となっています。
また、ラジオで流れたのはデモバージョンとなっており、その際トラックはAIさん「I Wanna Know」をサンプリングしたものを採用としていましたが、本来は別のトラックがあるそうです。その音源は私自身も聞けずにいるので、残念ながらここでお話することできません。
しかし、デモバージョンの時点でも非常に完成度が高く、ギラギラとした櫻井翔のかっこよさの真髄を感じることができます。またこの曲の歌詞では「俺が噂の大卒のアイドル」「マイク持つアイドル」などHip Pop Boogieの元となるような歌詞が登場していますね。
JOYFUL:ペンの指す方向プロトタイプ
こちらは先ほど話したペンの指す方向ChapterⅠのバース1にラップ部分が採用された楽曲で、当時のジャパニーズヒップホップのインディーズで名を馳せていたD.I.G Allstarsのアルバム「D.I.G ALLSTAR〜FACE Ⅱ FACE〜」に収録されている同名曲をサンプリングしたものとなっています。
こちらの楽曲は、「WINTER CONCERT 2003-2004~LIVE IS HARD だから HAPPY~」コンサートのソロ曲として披露されました。
ペンの指す方向の元となった曲ということもあり、櫻井さんのラップに対する向き合い方などを決めた楽曲かもしれませんね。
ラップ詞以外の部分はサンプリング元の曲をそのまま歌っており、こちらの楽曲もノスタルジックを感じさせながらも、ペンの指す方向とは違い曲調やリズムは明るく、いつの時かの楽しい思い出にゆっくりと浸ってみんなと歌う、そのような曲になっています。
同じ歌詞を歌っているのにも関わらず、その勢いや質感などで全然違う曲に聞こえる。そんな贅沢な楽しみ方ができる素晴らしい曲で、こちらもコアな櫻井翔ファンの間では愛されているものになっている印象です。
F.T.M(Fly To The Moon):櫻井翔ラップ人生のはじまり
こちらの曲もJOYFULと同じアルバム内の同名曲をサンプリングしたもので、ヒップホップ全開といった曲調になっています。
「嵐~台風ジェネレーション~SUMMERCONCERT2000」コンサートで披露され、DJの音も随所にちりばめられ、BPM高めで、韻もカッチリと踏んでおり、2000年作成ということで「今夜はブギー・バック」など往年の日本語ラップ曲をコンサートでカバーしていた頃のような姿が重なります。
今夜はブギー・バックの披露自体は2002年なんですけれどね。
個人的にはペンの指す方向と並んでこちらも最も好きな曲の一つとなっています。
おそらく時期的にもここのあたりから櫻井さんが自身で作詞を始めたものであり、現在の櫻井さんのプロトタイプ的な位置付けとして見て盛り上がってしまいますね。
まだ初々しいながらも、メンバーの名前を出したり、自信満々に聴衆のボルテージをあげまくるようなリリックやフローに、確かに櫻井翔の歌だと感じさせられ心を奪われてしまいますね。
またこちらの原曲のCDは現在でも購入できるので、櫻井さんのルーツを辿ったり、この曲の雰囲気に触れてみたい方には是非購入をお勧めします。
二人の記念日(Rap Fullバージョン/完全版):クリスマスに聞きたい冬の名曲
嵐のアルバム曲として発売された「二人の記念日」という曲があるのですが、そのラップ詞はもともと櫻井さんが作成したクリスマス曲という楽曲の歌詞の一部をそのまま使っているのです。
そしてクリスマス曲の歌詞をそのまま全て使い、二人の記念日のメロディに乗せて歌った曲がこのRap Fullバージョン/完全版となっています。
Aメロ、Bメロでは落ち着いた低い声でゆったりとラップ調に歌い上げ、その後のアルバム収録ソロ曲である「夢でいいから」などに見られる歌い方の特徴が出始めていますね。
サビでは「一人一人 each story」という歌詞があり、これは歌詞の中に現れる4つの話を表しています。
一つは失恋したクリスマスを歌った部分、2つ目は東京から出て地方に行ってしまった人たちに向けて書いた一人で過ごすクリスマスの部分、3つ目と4つ目はどちらも恋人たちのクリスマスを歌っており、この最後の二つが嵐としての楽曲「二人の記念日」のラップ部分として使われています。
櫻井さんは、「自分の歌は曲を聴いたり歌詞を見たときに、その背景が映し出されることを意識して作っている」と過去に語っています。
この曲はまさに、聞いただけで櫻井さんの描くそれぞれのクリスマスの情景がありありと思い浮かぶ楽曲となっています。
※補足2 7/31
以下の曲は「ラップソングではない」との指摘を受け、確かに櫻井さんのソロ曲ではありますがこれはラップソングではなかった為、番外編として最後に記させていただきます。何卒ご理解のほどよろしくお願い申し上げます。
Touch Me Now:番外編
続いてご紹介するのは、2003年のコンサート「How’s it going?」で披露された「Touch Me Now」です。
この曲はまさにセクシーさの権化。
全身白のゆったりとした姿でパフォーマンスしたこの曲では、曲が始まる前にスクリーンにホテルらしきところで服が散乱した暗い部屋の映像が映し出されます。
その後カメラがバスルームへ向かっていくと、湯船にいる櫻井さんが登場し、その目にカメラが向いたところから曲が始まります。
低いメロディーラインでセクシーさを強調した楽曲に、櫻井さんの若さと色気が存分にあふれたパフォーマンスが融合した神秘的な空間となっていました。
その後、映像では櫻井さんが身支度を始め、ベッドに横たわる女性のような後ろ姿を見向きもせず部屋を出るところでパフォーマンスは終了します。
演出からもわかるとおり、男の劣情をストレートに書いた曲ですが、そこに下品さが介在しておらず、むしろ美しい芸術作品として昇華されています。
またこの曲はha-jさんという方が作詞・作曲したものですが、その後の櫻井さんのソロ曲でもha-jさん作の曲は名曲ばかりで、そういった意味でもファンにとってとても熱い曲となっています。また嵐の楽曲の編曲も多く手掛けており、「夏の名前」、「Be with you」、「5×10」はじめ多くの名曲に携わっています。
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