主にアニメソングを中心とした作詞・作曲家として知られる梶浦由記(かじうら ゆき)さん。
ここ最近の活動では、人気コミックを原作とした『鬼滅の刃 無限列車編』の劇場版主題歌の「炎(ほむら)」をアニソン歌手のLiSAさんと共同で制作したことでも話題となりました。
過去には『ソードアート・オンライン』『まどか☆マギカ』『Fateシリーズ』などの人気アニメの主題歌や劇伴にも携わっており、彼女の生み出す音楽は、作品の世界観をより深くする重要な要素を担っています。
その実力から、同じく女性作詞・作曲家として知られる菅野よう子さんとは双璧をなす人物としても知られており、国内だけでなく海外からの知名度も高い人物です。
そこで今回は、梶浦さんの経歴を踏まえつつ、これまでに生み出してきた曲の中から代表するものを紹介したいと思います。
目次
梶浦由記とは?
- 名前:梶浦由記(かじうらゆき)
- 別名:Fion/FictionJunction
- 生年月日:1965年8月6日
- 出身地:東京都
ガールズバンドでメジャーデビュー
1965年に東京都で生まれた梶浦さんですが、小・中学生時代はドイツで過ごした帰国子女です。高校生の頃に日本に戻り、東京都立国立高等学校へと入学。在学中にはアマチュアのガールズバンド『15 SAND(いちごさんど)』に加入し、キーボーディストとして音楽活動を展開していきました。
大学に進学、そして就職後もバンドとしての活動が続けられ、その活動の最中にファンハウスの目にとまったことにより、1993年に『See-Saw』でメジャーデビューを果たします。デビューからコンスタントに新曲を発表し、一部の楽曲はドラマ主題歌に起用されるなどの活躍がありました。
しかし、メンバーの脱退などもあり、1995年に活動休止を発表。当時在籍していた梶浦さんと石川智晶さんは、それぞれのソロ活動に専念するようになります。
メンバーの石川智晶さんは、アニメ『ぼくらの』オープニングテーマとしても有名な「アンインストール」を作詞・作曲した人物でもあり、アニソンを中心に楽曲提供を行っています。
活動休止からソロ活動へ
ソロ活動に専念するようになった梶浦さんですが、数年間は収入が全くない日々を過ごしたそうです。
転機が訪れたのは1998年。PlayStation用アドベンチャーゲーム『ダブルキャスト』でのゲームサウンドの仕事に携わったことにより、アニメやゲーム音楽を中心とした活動を行うようになります。
その後の活動ですが、実はこの転機をきっかけに活動休止だったSee-Sawが復活を果たしました。復活と同時にレーベルをファンハウスからビクターエンタテインメントへと移籍。2002年にはテレビアニメ『機動戦士ガンダムSEED』のエンディングテーマ曲「あんなに一緒だったのに」を手がけました。
そして11枚目のシングル「君は僕に似ている」は、グループとして歴代最高のオリコンチャートを記録しました。しかし、このリリースとともに再び活動休止となり、それぞれのソロ活動へと転進します。
自身の楽曲を用いたプロデュース
ソロ活動を再開させた梶浦さんはその後、2003年にソロプロジェクト『FictionJunction』を立ち上げ、ヴォーカルには声優などでも活躍する南里侑香さんを迎え入れました。主に『機動戦士ガンダム』関連の楽曲「暁の車」「焔の扉」などを手がけています。
『FictionJunction』はヴォーカルが固定されていないソロプロジェクトであり、参加ヴォーカルごとに別々の名義で表記されます(『FictionJunction ○○』など)。
また、2008年には女性ヴォーカルユニット『Kalafina』をプロデュース。劇場版アニメ『空の境界』の主題歌を担当し、その主題歌を収録したシングル「oblivious」は、ファンからも高い支持を集めました。
その後も続編として公開された映画の主題歌を同ユニットともに担当し、リリースされた「sprinter/ARIA」「fairytale」は高い評価を受けるとともに、空の境界関連の楽曲はKalafinaの代表曲としても知られるようになります。
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以降、梶浦さんはアニソン界のコンポーザーとして大きく躍進するようになり、数々の人気アニメ音楽に携わるようになります。『魔法少女まどか★マギカ』『ソードアート・オンライン』『Fate/Zero(以降のシリーズ含む)』『鬼滅の刃』など、特にアニメ制作会社『Ufotable』が手掛けるアニメ作品を中心に話題を呼びました。
梶浦さんはこれらの活躍から『Newtype×マチ★アソビ アニメアワード』で劇伴およびサウンド賞。『東京アニメアワード』において音響・パフォーマンス賞を受賞しています。
梶浦由記の主な代表作
梶浦さんの経歴でもいくつか紹介しましたが、彼女は非常に多くのアニメ作品に携わっている人物です。主題歌はもちろんのこと、劇伴でもその類まれなる才能を発揮しています。これは彼女がドイツで育ったことも要因の一つかもしれませんが、彼女の生み出す音楽には邦楽だけでは表現できない独自の音楽性が盛り込まれているように思えます。
下記の項目では、そんな独自性溢れる梶浦さんが携わった楽曲について触れていきます。ここ数年の間で話題になった曲を掲載しているので、気になる方はぜひご覧ください。
Kalafina「Magia」
ポップでキュートなイメージから微塵も感じさせない衝撃の展開で話題を呼んだ『魔法少女まどか★マギカ』。本作品の音楽全般を担当することになった梶浦さんですが、今回の起用はシナリオライターとしても有名な虚淵玄さんからの熱烈なラブコールによって実現しました。ちなみに後に放送されるテレビアニメ『Fate/Zero』においても、二人は共演することになります。
本作品において梶浦さんは、劇伴だけでなくエンディングテーマの「Magia」の作詞・作曲・編曲までも担いました。本編のラストシーンにかかるかたちで使用され、楽曲そのものも完成脚本を読んだうえで制作したため、作品の世界観を非常に印象づけるものとなっています。
さユり「それは小さな光のような」
サスペンスとタイムリープを題材にした漫画『僕だけがいない街』。それを原作としたテレビアニメにおいて、梶浦さんは劇伴およびエンディングテーマ曲を手がけました。歌唱を担当したのは、シンガーソングライターとして活躍されているさユりさんです。
本作品のアニメ監督を務めた伊藤智彦さんは「作品のノスタルジックさにマッチするのは梶浦さんしかいない」と考えていたそうです。実際に制作された曲は、これまでの梶浦さんが手掛ける壮大な音楽とはまた違った一面を感じ取ることができるものとなっており、ファンにとっても意表を突かれるものだったかもしれません。
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Aimer「春はゆく」
劇場版アニメシリーズ『Fate/stay night[Heaven’s Feel]』の三部作目の主題歌。歌唱を担当したのは多数のタイアップ曲を手がけてきたAimerさんです。ちなみに梶浦さんとAimerさんが同映画の主題歌を手がけたのは、第一・第二部に続いて三度目となります。
今回が最終章となる映画を飾ったこの主題歌は、第一部の「花の唄」と第二部の「I beg you」を引き継ぎながらも、これまでの激しさが強調されるものよりもより丁寧な楽曲に仕上がっているように思えます。ヴォーカルが非常に際立つのも、そのせいかもしれません。
また、最後を彩るこの歌のために、Aimerさんと梶浦さんによるセッション動画がYouTubeに投稿されています。本編の歌とは違った雰囲気を味わうことができるので、こちらもぜひご覧ください。
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ASCA「雲雀」
Fateシリーズのスピンオフ作品である『ロード・エルメロイII世の事件簿 -魔眼蒐集列車 Grace note-』。壮大な世界観で知られているFateシリーズですが、原作を知らない人でも楽しめるミステリー要素で構成されたシナリオが話題となりました。
梶浦さんは、本作品の劇伴および主題歌を担当しました。オープニングテーマである「starting the case : Rail Zeppelin」は、アニメ主題歌としては珍しい歌がない仕様となっており、ミステリアスな雰囲気を疾走感溢れる曲調で表現されています。
そしてエンディングテーマ「雲雀」にはアニソン歌手のASCAさんが起用されました。季節の移り変わりを感じさせ、時計の針のような一定のリズム感が特徴的となっています。優しさと悲しさが盛り込まれ、オープニングのミステリアスとはまた違ったものを感じさせてくれるでしょう。
FictionJunction feat.LiSA「from the edge」
兄妹の絆を描いた和風剣戟奇譚。その漫画を原作としたテレビアニメ『鬼滅の刃』の人気は、国内だけでなく海外にまでおよんでいます。2019年4月よりテレビシリーズが放映され、梶浦さんは劇中歌およびエンディングテーマ曲である「from the edge」を担当しました(劇中歌は椎名豪さんとの共同)。
歌唱するのは、オープニングテーマ曲「紅蓮華」を担当したLiSAさんです。アーティスト名義に関してですが、これは梶浦さんのソロプロジェクト『FictionJunction』を表しています。それにLiSAさんが参加するかたちで、今回の名義となりました。
配信限定であるにもかかわらず、同楽曲はファンからも高い評価を得ています。エンディング特有の収束するイメージはなく、登場人物たちの前へ進み続けるという気持ちが込められているのが特徴的です。梶浦さんはこの楽曲の制作に関して「作品世界と寄り添う音色をイメージ」していることを明かしており、そのイメージがLiSAさんの歌唱によってより膨らんでいるように思えます。
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LiSA「炎」
最後に紹介するのは、劇場版『鬼滅の刃 無限列車編』の主題歌となった「炎」です。「ほのお」と読んでしまうかもしれませんが、実際は「ほむら」と読みます。
今回の主題歌は、テレビシリーズの「紅蓮華」でも話題となったLiSAさんが引き続き歌唱することになりました。また、同じく梶浦さんも継続で音楽全般に携わっています。
実は今回の主題歌は、LiSAさんと梶浦さんが共作で制作したものになります。LiSAさんは制作にあたって「キャラクターの物語が続いていく希望が持てるような、壮大で力強いバラードにしてほしい」と、プロデューサーから話があったことをラジオ番組で明らかにしています。
また、梶浦さんは本来共作をしないタイプとしても関係者からは知られていますが、LiSAさんとの共作は、それだけこの主題歌が特別なものであることを示しているように思えます。
実際の楽曲の評価ですが、ファンからも非常に高い評価を得ているようです。CDシングル・DLシングル・ストリーミングの全ての部門において、オリコン週間チャート初登場1位を記録しており、LiSAさんが同時期にリリースしたアルバム『LEO-NiNE』も初登場1位を獲得する快挙を達成しました。
シングル・アルバム共に首位獲得は、令和時代初を飾るだけでなく、女性アーティストでは宇多田ヒカルさん以来16年6ヶ月振りでもあります。ちなみにこの記録はLiSAさんで10組目と、達成した人はごく僅かの記録です。
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梶浦由記・まとめ
以上、梶浦由記さんの経歴および代表作の紹介でした。
アニメ制作において、梶浦さんの名前が載らないことの方が珍しく、それだけアニメ音楽において影響力を与えている人物です。
表立った活動とは言えませんが、縁の下の力持ちとして現在のアニメ音楽を支えています。しかし、そういった支えがあるからこそ、より良い作品が生まれるのでしょう。
ファンであれば、彼女が今後どのように作品を彩ってくれるのか非常に楽しみでしょう。日本のアニメ文化は海外でも非常に高く、アニメ文化をより盛り上げてくれる存在として今後も頑張ってもらいたいですね。
それでは、ここまでご覧いただきありがとうございます。
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