Agust D『D-DAY』 BTS・SUGA、3部作の集大成!空白を癒す芳醇な10曲を徹底解説

Agust D『D-DAY』 BTS・SUGA、3部作の集大成!空白を癒す芳醇な10曲を徹底解説

ニューアルバム『D-DAY』収録曲を徹底解説!Part.3

극야

再びAgust Dの真骨頂、一息に攻め込むようなラップに興奮する「극야」「最近はたくさんの人の心に怒りが溜まり、互いを憎んでいる」という憂いが込められた「극야」は、誰か具体的な相手に怒りをぶつけるイメージとはまた違うのだと、Agust D本人は明かしています。

緩やかなメロディラインですが、それがむしろ自身の誠実さに対する自問自答を誘うように響き、いつまでも脳裏でループするような感覚がある一曲です。

Interlude:Dawn

Agust DでもSUGAでもない頃、音楽が好きでたまらない青年ミン・ユンギには『ラスト・エンペラー』の劇伴に感銘を受けた原体験があります。慟哭するような諧調から始まる「Interlude:Dawn」にはそんな映画的広がりがあり、ラストスパートに向けてドラマティックに橋渡し役を務めてくれます。強さから一転してラフに変化していくラップが聴きどころです。

Snooze(feat.Ryuichi Sakamoto,김우성ofThe Rose)

坂本龍一による荘厳なピアノの旋律からスタートする「Snooze」は、だんだんとエモーショナルに高まっていく展開が感動的です。

「Snooze」「居眠りをしているすべての人に捧げる曲」、つまり何かを達成するために頑張って居眠りするほど疲れている人に捧げる曲だとはっきり口にしたAgust D。まだ小さかった事務所を一代で世界規模に押し上げたBTSには、頼れる先輩がいません。そんな過去を、Agust Dは「自分が後輩で、誰かが僕にそれを言ってくれたら苦しくなかったかな」と振り返ります。頑張っている後輩にも聞いてみて欲しいとエールを送るAgust Dは、アイドルという仕事と仲間、そして自分を心から愛しているのだと思いました。「全てよくなるよ」とリフレインする歌詞にも勇気づけられます。

そしてARMYの皆さんなら、終盤にSUGAのソロ曲「So Far Away」の歌詞がサンプリングされていることにお気づきでしょう。夢にまつわる苦悩と希望が切々と響く「So Far Away」は、今回「皆さんの夢が満開になるように、というメッセージを必ず伝えたかった」と、「満開になる」というフレーズが「満開になるように」と変えて歌われています。この不安定な時代に「満開になる」とは断言出来ないけれど、「満開になるように」祈ることは出来る。そんなAgust Dの優しさが込められているようです。

Life Goes On

エフェクトのかかる声でスタートし、キラキラと鳴るバックサウンドが切なさを誘う「Life Goes On」は、ご存知の通りBTSのアルバム『BE』に収録された同名曲を再解釈した一曲。伸びやかさが胸を締めつけるプレ・コーラス「時間が流れていって」は、3年前に録音したBTSバージョンのガイドを使っているそうです。「自信があったからこの曲になると思った」と苦笑するAgust Dは、アルバムのエンディングに必ず使おうと編曲作業に取り組んだのでした。

歌詞に違いはあれど、『BE』の象徴的な曲で『D-DAY』を締めくくる姿勢に、“空白を癒やす”という言葉を想起しました。先んじて兵役に就いた最年長のJINによれば、本来ならBTSは『BE』を以て順次入隊する方針だったそうです。新型コロナウイルスの感染拡大の中産み落とされた『BE』は、不安や憂鬱から少しずつポップに展開しながら、パンデミックを生き抜く幸福のアンセムとなった「Dynamite」まで駆け抜けて心の虚無感を癒やすアルバムでした。

入隊という避けがたい空白を迎えるBTSとARMYをメッセージ性の高い楽曲で埋めてくれる『D-DAY』は、時を同じくして製作が進んでいた『D-DAY』には、ターニングポイントだった『BE』と同じ精神性を感じます。今後『D-DAY』という作品も、ARMYのソウルメイトのように存在になるのではないでしょうか。

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