目次
羊文学の名曲 Part.3
OOPARTS
「OOPARTS」は2022年リリースのメジャー2ndアルバム『our hope』の収録曲。
ロックバンドNo Busesのフロントマン近藤大彗によるソロプロジェクト、Cwondoのアルバムに感銘を受けた塩塚が、その作品から感じた2000年代の空気感をテーマに作った楽曲だと言います。
<沢山の円盤に囲まれて 最高の瞬間を記録した>
CDやブラウン管のテレビといった、僅かにローテク感が残っているからこそ生き生きとした印象があった物たちが、主流から外れた現在。
あらゆる物がシャープで便利になったもののその進化が手に余る感覚や、炎が消えかけているような感覚を、この楽曲ではキャッチーに表現しています。
タイトルのオーパーツとは時代や文明にそぐわない産物のことです。
未来には地球が滅びて火星に移住することになるという説に衝撃を受けた塩塚は、”地球自体がオーパーツになってしまうのではないか”というシビアな考えを歌詞に落とし込んでいます。
この楽曲ではシンセサイザーが導入されていて、それは羊文学として初の試みです。
それまでは3人で鳴らせる音にこだわりを持ってきましたが、くるりがシンセサイザーを取り入れてダンスミュージックに接近した4thアルバムのインタビュー内で、「シンセを買ったから使ってみた」と語っていたことに影響を受けた塩塚。
くるりと同様の動機で、購入していたシンセを使いデモ音源を作ったと言います。
プロデューサーの助言により、そのシンセアレンジと、別途作った3人だけのアレンジ、両者を合体することになったのだそう。
シンセを駆使したカラフルなサウンドは、楽曲のテーマである00年代の空気感や宇宙といったイメージを巧みに表現しています。
浮遊感たっぷりのシンセや4つ打ちのハイハット。
後半にはそこに疾走感溢れるファズギターが加わり、明るいメロディと共に聴き手の胸を弾ませます。
<今ならばまだ間に合うのに/誰か聞いて、ただ、生きたいの>
危機感をはらみつつも、まだ残っている希望、そして確かに存在する地球の美しさを噛み締めるかのような「OOPARTS」。
羊文学の新たなフェーズを感じさせる1曲は、尖った感性とカジュアルに楽しめるポップな音像を兼ね備えています。
光るとき
2022年リリースの「光るとき」は、TVアニメ『平家物語』のオープニングテーマ曲として書き下ろされた楽曲です。
歴史を題材にした『平家物語』は、人の命を扱うTVアニメ。
多くの命が亡くなった平家の人々への鎮魂の気持ちで作られた作品だと言います。
アニメに登場する平家の人々へ向けて、大切に思いながら歌詞を書いていったと語る塩塚。
理不尽な最後を迎えてしまったかもしれないけれど、その存在は現在まで語り継がれていること、幸せに眠ってほしいということを、彼女は優しく綴っています。
混沌の時代や悲しみといった厳しい現実を見つめながらも、<何回だって言うよ、世界は美しいよ>と希望を見い出す言葉たち。
そして、鮮やかで躍動感みなぎるドラム、ドラマチックに煌めくギターが生み出すサウンドは生命感に溢れ、その希望を更に輝かせるかのようです。
人はいつか死んでしまうことが分かっていても、強く前向きに生きていけるように。
そんな思いが感じられる音像は、強く、そしてたまらなく優しく、聴き手の胸に響きます。
MV総再生数は620万回を超え、「1999」と並ぶ羊文学の代表曲となった「光るとき」。
普遍的な魅力に満ちたこの楽曲は、時を超えて愛され続けるだろうと感じずにはいられません。
Blue.2
1st EP『トンネルを抜けたら』の収録曲、「Blue.2」。
塩塚が羊文学を始めた頃から大切にしてきたこと、更には彼女が音楽を作る理由にも結びつく楽曲のため、最後にご紹介したいと思います。
この楽曲は、中学の女子生徒2人が線路に飛び降りたというニュースを見て作られたそうです。
塩塚は、些細なことが気になり、「いつか大丈夫になる」という大人の言葉も響かなかったと、自身の中学生時代を振り返ります。
皆大人になるにつれて当時の気持ちを忘れてしまい、悩んでいる人をメンヘラと呼ぶ人までいるけれど、現実にはそれで命を落とす人もいる。
だから彼女は、つらいと感じている人が「ここにいていいんだ」「泣いてもいいんだ」と思える曲が作りたかったのだと語っていました。
そして、その気持ちをこれからも大事にしたいと。
静寂なギターサウンドの中、つぶやくように歌われるのは誰かを失った喪失感。
中盤に差し掛かると、痛切な想いを代弁するかのように歪んだギターが激しく響き、静と動の変化を繰り返しながら進んでいきます。
しかし終盤には景色が広がるように音やコーラスが重なり、やり場のない感情に折り合いをつけるかのよう。
<大人になるには早すぎた>
切なくなるような、それでいて苦しい気持ちを落ち着けてくれるかのようなフレーズで楽曲は幕を閉じていきます。
この楽曲は、学生だけでなく、大人になりきれない感覚を抱える多くの人たち、更には思春期を経験した全ての人たちに、訴えかけるものがあるはずです。
塩塚自身も大事な曲だと語る「Blue.2」は、聴き手にそっと手を差し伸べてくれるような名曲です。
最後に
いかがでしたか?
ここにはとても挙げきれないほど、羊文学の楽曲は名曲揃いです。
他の楽曲もぜひチェックしてみてくださいね。
▼あわせて読みたい!